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『自分を活かす“気”の思想』 中野孝次 of 新書ブックセンター - 新書専門のレビューサイト -

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著者
中野孝次
初版発行
2001年11月11日
ISBN
4-08-720118-X C0210


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概要&レビュー

明治期を中心に活躍した幸田露伴。そのしつけの厳しさなどは、娘の幸田文の『父』などに詳しい。幸田露伴は、1867年(慶応3年生)ですから、その気骨には江戸、明治期の日本人のたたずまいが染み込んでおり、そこから産まれる文学作品もまた、深い趣を讃えています。
そんな幸田露伴が現した人生の処方箋が『努力論』。タイトルをそのまま読むと、最初に努力ありきの根性モノと思われがちですが、東洋思想の根底にある“気”のあり方を解説しながら、一つ一つ丁寧に人生を生き抜く知恵を説いています。本書の『自分を活かす“気”の思想』は、その幸田露伴の『努力論』を、ドイツ文学者であり、作家の中野孝次氏が解説したもの。中野孝次氏は苦学をしながら文学者になった方で、露伴の『努力論』を解説するには格好の人物かもしれません。
本書は、露伴の『努力論』を、「気」というものをキーワードにしながら読み解いていきます。『努力論』には“気”という言葉がたくさん出てきており、それぞれを分類していてます。「気」というとどこかとりとめのない曖昧なものを指すと思われがちで、話の内容も抽象的になりがちです。しかし露伴は、身体における「気」、精神における「気」というものを多角的に分析し、人生において必要な「気」のあり方を模索しており、「気」というものが具体的なもので、それを人生に活用できる実態のあるものとして解説してくれています。本書を読みますと、露伴は東洋医学の「気」の概念もかなり深く理解していたようで、実践的なものとして「気」を活用しようとしていたことが良く分かります。
中野孝次氏の文章によって、露伴が把握していた「気」の活用の仕方を垣間見ることができます。