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『天才アラーキー写真ノ方法』 荒木経惟 of 新書ブックセンター - 新書専門のレビューサイト -

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著者
荒木経惟
初版発行
2001年5月22日
ISBN
4-08-720090-6 C0272


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概要&レビュー

 私小説家ならぬ、私写真家である著者の荒木経惟氏は、その写真の対象の幅がとにかく広い。あるときは何でもない散歩の一風景のようなものであったり、身近な人であり、その庶民的な味わいがうまく出ています。そうかと思うと妊婦のヌードを撮ってみたりと、かなり挑発的で官能的な写真で観る人の心を揺り動かす。そして同時にその写真の量たるや膨大で、写真の幅、質、そして量といった全てにおいて天才性を遺憾なく発揮しています。
 本書は、天才アラーキーが自ら語る自画像のようなものでありますが、一般的な人物像よりも、さらに写真家としてのアラーキーを中心にしながら話が展開していきます。一見すると単なるエロおやじのようにしか見えないアラーキーの中に、どんな思いや、どんな思想があるのか、その端々に、エロスと同居するキラリと光る天才の言葉がちりばめられています。荒木経惟という人物の逞しい生命力で読む者を圧倒し、単に勢いだけで攻めるのではなく、時に写真についての基礎も語り、そして写真に対する愛も語り、アラーキーの作品同様に、幅広い人物像が浮かんできます。
 写真家としての考え方も随所に見られますので、写真家を目指す人にはもちろん勉強になることこの上もありません。その他に、写真愛好家の方、生命力の強さを感じたい方、アート志向の方などにもおすすめの一冊です。日本の写真の歴史を語る上で、なくてはならないアラーキーという存在を、十二分に楽しめること確実です。