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『努力しない生き方』桜井章一 of 新書ブックセンター - 新書専門のレビューサイト -

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著者
桜井章一
初版発行
2010年3月22日
ISBN
978-4-08-720534-3


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概要&レビュー

著者は“代打ち”として20年間無敗の伝説を誇る麻雀のプロ。プロの麻雀うちと言えば、誰よりも勝負に飢え、誰よりも勝負にこだわる生き物かと思いきや、本書を読むと、とにかく“無欲”“平常心”“淡々”といった言葉が連想される。これが本当に麻雀から学んだ生き方なのかと疑うほどではあるが、禅問答のように繰り返される著者の生き方や心境を見ると、ある域に達したものだけが見ることができる高みにいることがわかる。肩の力が抜け、こだわりもなく、その“突き抜けた脱力”は、武道の名人のようなしなやかさをも感じる。
本書は麻雀師が書いたものだが、麻雀の指南書ではない。麻雀を通して著者が達した、人生をしなやかに生きる(決して偏ったり、反発したりしない生き方)心持を話したもの。その中には多くの具体的ヒントがあるが、その大元にある著者の思いは、「足し算の生き方」を捨て、「引き算の行き方」になること。我々はついつい他人と比べて何が欲しい、あれが欲しいといろんなものを手に入れたくなる。その“足し算”が無理な生き方を招き、結果自分自身を圧迫していく。逆にあれも持っている、これも持っていると“引き算”をしていくと、本当に必要なもの、本当に大切なものが見えてくる。“引き算”をして、無駄な贅肉をそいでいくと、その先に残ったものは、実は自分はすでに持っている、とても豊かな存在だと気がつく。それはまさしく、誰にも侵されることのない自分自身、自分らしさなのではないか。
本書はすぐに読める。そして、具体的である。力を抜いて読むことをお薦めします。