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『菜根譚 中国の処世訓』 湯浅邦弘著 of 新書ブックセンター - 新書専門のレビューサイト -

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著者
湯浅邦弘
初版発行
2010年2月25日
ISBN
978-4-12-102042-0 C1210
定価
820円(本体)


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概要&レビュー

中国は処世訓の国とも言われており、過去数々の処世訓が書かれてきました。その中でも最高傑作と言われているのが、明末に洪自誠の筆による『菜根譚』です。
『菜根譚』の“菜根”とは、野菜の根は深くて筋が多いが、それを苦にせずよく咬めば、世の中の真の味を理解できると言う意味が込められているそうです。またその他に、質素な食事、そして質素な食事を厭わない清貧の暮らしをよしとすると言う意味もあるということで、どちらも人生を生き抜くための処世訓にふさわしい意味を含んでいます。
著者の洪自誠については詳細が不明で、おそらく明末期の万暦年間(1573~1620)の人物と推測され、士大夫などの役人として働いてきた知識階層の人ではないかと言われています。
『菜根譚』は、当時の中国の知識階級の教養として学ばれてきた儒教、仏教、道教と言ったものをベースにしています。それらの教養をうまく取り入れながら、人生の羅針盤たるものに構成されています。この中公新書の『菜根譚』は、各単元の最初に現代語訳の文章が載っており、その後にその単元の内容、解説があり、所々に漢文読みの本文と現代語訳が挿入されており、とても分かりやすい構成になっています。扱われている単元のタイトルを挙げてみますと、「人と交わる」「幸せと楽しみ」「冨貴・名声・欲望」「学びと教え」「善と悪」「俗を超える」というものがあります。その後の章は、『菜根譚』に出てくる言葉の解説、そして最終章は処世訓の歴史がまとまっています。
『菜根譚』の処世訓を概観するような、入門書としてとても最適な一冊です。入門書ではありますが、各解説はその域にとどまらないので、入門書でありながら、実践的なものとして読むことができる良著です。


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