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『江戸の思想史 人物・方法・連環』 田尻祐一郎著 of 新書ブックセンター - 新書専門のレビューサイト -

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著者
田尻祐一郎
初版発行
2011年2月25日
ISBN
978-4-12-102097-0 C1210
定価
800円(本体)


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概要&レビュー

小学校から高校生まで、社会化の授業の中で江戸時代を学びます。そしてその江戸時代の主要な思想家について学びます。高校で日本史を選択した人はなおさら勉強します。しかし多くの場合それは暗記用であり、試験対策であったりします。大抵は「本居宣長-『古事記伝』」というように覚えていきますが、本居宣長がどのような人物なのか、そしてその宣長が記した『古事記伝』とはどのような内容で、どのようなインパクトを社会に与えたのかといったことはほとんど学びません。社会に大きな影響を与えたからこそ試験にも出るほどに有名なわけですが、暗記科目として覚えるのが精一杯で、人物像や書物の内容まで膨らませて学ぶ余裕などないというのが学生の本音でしょう。残念なことにこういった暗記科目は、その後の人生において単なる知識として残存するのみで、人生を豊かにするまでの興味の対象にならないまま時が過ぎてしまいます。
前置きが長くなってしまいました。本書は、タイトル通り江戸の思想史を概観したもの。江戸思想の根底に流れているものをはじめに語りながら、江戸時代の時間軸に沿いながら、時代時代に登場した人物のプロフィールから、どのような功績があったのか、どのような影響を与えたかを伝えています。本書で扱っている人物は、山崎闇斎、伊藤仁斎、荻生徂徠、貝原益軒、安藤昌益、本居宣長、杉田玄白、平田篤胤、吉田松陰、山鹿素行、中江藤樹などなど。さらには江戸期に盛だった宗教(天理教、富士山信仰)も扱っております。
本書は一人一人の人物を深く掘り下げるものではありませんが、要所要所で各人物の思想の狙いをわかりやすくまとめてあり、江戸思想史のガイドとして、偏りのない広い範囲で多くの人物を取り上げています。それぞれの人物の人となり、そして伝えようとした思いと内容を概観すると、そこには深い考察と哲学があることを知り、さらに何人かの人物を深く知りたいと思ってきます。
暗記科目から、自分の人生を豊かにする思想としての江戸時代を知りたい方にとってお薦めな一冊です。


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