概要&レビュー
2010年南アフリカW杯で、サッカー日本代表はベスト16という成績を残しました。これについてはいろいろな意見があると思いますが、本当であればこの舞台で指揮を取っていたはずのイビチャ・オシム氏がどのように日本の戦いぶりを観ていたのか。本書は、オシム氏の視点によって日本代表を観たもので、さらには異国人が見た日本人の特質などにも触れていたりします。その一つである、「日本人は、誰もが、責任を回避しようとする。」という指摘は日本人の一人として胸が痛い。“責任を回避しようとする”、だからこそタイトルのように『恐れるな!』とオシム氏は告げる。
イビチャ・オシム氏が日本代表の監督になったことは、全世界のサッカー界から見ても、ものすごいことであったと思います。オシム氏は選手に考えながら走ることを要求し、フォーメーションの連動や戦術の意義を日本に定着させた立役者の一人であったのではないかと思います(本人は記者会見ごとにはぐらかしたりすることが多かったですが)。サッカーをする選手はもちろんのこと、見る側にも高度なサッカー観、哲学するサッカー観を植えつけてくれました。その姿はスポーツの枠を超え、様々な分野にも影響を与えたのではないでしょうか。
本書はさらっと読めます。さらっと読めますが、サッカーからはじまる考える人生の出発点になるかと思います。オシム氏についてのより深い内容となると、他のオシム氏の本(『オシムの言葉 フィールドの向こうに人生が見える』『オシムの戦術』など)をおすすめしますが、2010年南ア大会の総集編とともに、ザッケローニジャパンへの展望を知りつつ、軽く新書で読みたい方にはお薦めの一冊です。