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『日本美の再発見』 ブルーノ・タウト著 篠田英雄訳 of 新書ブックセンター - 新書専門のレビューサイト -

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著者
ブルーノ・タウト
訳者
篠田英雄
初版発行
1939年6月28日


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概要&レビュー

まずはじめに、かつてこれほどまでに日本の美、日本人、そして日本そのものを愛してくれた外国人の方がいたことに、感謝の意を評したいと思います。そしてまた、一人の外国人の心を揺り動かした日本の美を紡ぎつなげてきた日本の歴史に感謝し、そして自分もまた、その延長の上にあることに感謝をしなくてはならないと思う。
開国間もない日本は、世界の中でも後進国であり、かつ独特の文化を保持していました。ちょんまげに和服といういでたちからしてすでに異端に見えたことでしょう。しかしその後進国ぶりに比して、仏像や建築物、浮世絵など、多くの芸術品に満たされており、そのギャップもまた西洋人の興味の対象となっていたことでしょう。一見すると、そういったギャップや異質性による魅力だけで、美の本質からは外れていると考えた西洋人も、当時は多かったようです。
しかし本書の著者であるブルーノ・タウトは、そういった色眼鏡で日本を見るのではなく、日本が持っている独特の文化をうまく抽出し、そしてそれをまた日本人自身にも教えるということをしてくれた人ではないかと思います。ブルーノ・タウトはドイツ人生れの建築家で、合理性と美の一致を提唱した人。そのタウトが見た日本建築の中で、とくに推挙しているのが伊勢神宮の外宮と京都の桂離宮。本書の前半は伊勢神宮外宮、後半は桂離宮と修学院について語られ、その時代を超えた精神性や美意識をあますところなく述べています。本書の中ほどは、ブルーノ・タウトが旅した日本の風景が、日記として綴られています。当時はまだ珍しかった外国人が、日本をどのように旅していったのか、時にユーモラスや苦労話を交えながら、日本人のたたずまいのすばらしさを語っています。
古き良き日本は、日本人にとっても、既に遠い過去のもになってしまったようです。本書はまるでタイムカプセルのように、当時の光景が綴られていますので、現在の私たちもこの本を通して、当にタイトル通り、あらためて日本の美を再発見できるのではないでしょうか。