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『慢性うつ病は必ず治る』 緒方俊雄著  of 新書ブックセンター - 新書専門のレビューサイト -

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著者
緒方俊雄
初版発行
2010年11月30日
ISBN
978-4-344-98191-1 C0295
定価
760円(本体)


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概要&レビュー

人間の身体と心はとても複雑で、正常と病気の境目は曖昧なことも多い。そしてそれを治すとなるとさらに曖昧になる。血眼になってがんの治療薬を研究しているにもかかわらず、未だ決定的な薬はなく、逆に薬で死を早めてしまうケースもある。そういう意味で、医学に“絶対”はなく、“必ず治る”ということは言い切れない。本書はそれに反して、慢性うつ病は“必ず治る”というタイトルが付いている。
タイトルに疑問を持ちつつも手にしてみる。著者は企業内でカウンセリングをしてきた方(現在は独立している)なので、症例の多くは企業に勤めているクライアントさんを基にしたもの。なので、病院に来るような重度なものよりも、若干症状や根の深さは浅いほうなのかもしれない。また、こういった本になる症例というものは、治ったものを取り扱うものなので、本書だけを読めば“必ず治っている”もの。
以上のように、こういった本の難しさがあるわけですが、しかしそのあたりを差し引いても、本書は読ませる力があると思う。本書の良さは、その読ませる力くる安心感、そしてさらに著者の温かい眼差しや忍耐力が伝わってくるので、うつ病も治ると言う気持にさせてくれるのが嬉しいところです。うつ病になると、慢性的、定期的に好不調の波に翻弄されてしまいがちですが、しかし「うつ病も治るのだ」ということを思うことが先ずは出発点になり、それだけでも、身体や心は改善していくもの。その出発点として本書は価値があるのではないかと思う。
本書の症例の中には、治るまでにとても長い年月がかかったものもあるようです。長い年月がかかることに不満を覚える方もいるかもしれないが、しかし例えば一般的にも、失恋の痛手から立ち直るのにも2年くらい必要なこともあるように、本来心の改善というのは時間がかかるもの。そこに寄り添い続けてくれるかどうかがカウンセラーの良し悪しではないのだろうか。本書の著者は、特別なことをするわけでもなく、一緒にいて我慢強く聞き続ける、そういったことができる方であると思います。
本書の最初のほうでは、うつ病の分類などをしています。専門の方によると少し手薄なところもあるようですが(間違った知識ではない)、一般の方にも分かりやすくしてあると言う意味で、概観するにはちょうどいいと思います。その他に、参考文献もたくさん掲載されているので、学ぶ側としてもスタートラインになりそうな一冊です。


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