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『うつで困ったときに開く本』 香山リカ of 新書ブックセンター - 新書専門のレビューサイト -

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『うつで困ったときに開く本』香山リカ朝日新書 新書ブックセンター

著者
香山リカ
初版発行
2009年12月30日
ISBN
978-4-02-273309-2


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概要&レビュー

テレビのコメンテイターなどでもお馴染みの香山リカ氏の本。精神科医の視点で世相を切り抜くコメントは、独特であり、そして納得のいくものがとても多く、コメントの内容からその人気振りが良く分かります。
本書はうつについて、Q&Aで分かりやすくまとめたものです。うつと言いますと、かつてはあまり公にはできない症状の一つで、そのために早期発見・早期治療が遅れがちなものでもありました。しかし最近はうつということを公にできる社会になり、会社でもかなり融通が効くようにもなりました。そこで周りでもうつ病という言葉を良く聴くようになったのですが、それはうつ病に対して周りがより深く理解してあげると言うことが要求されるということでもあります。うつ病に対して使ってはいけない言動、うつ病の方への接し方、会社の上司であれば、うつ病を患う部下との接し方など、様々なシチュエーションでの理解が必要になります。本書はそういった場面を想定したQ&Aも多くありますので、自分の周りのうつ病の方への配慮などを学べる内容になっています。
本書の最初のほうでは、うつ病の分類をしていますが、全体の内容は、最近増加傾向にあるといわれる「新型うつ病」を対象にしているようです。これまでの本来のうつ病は、かなり重篤な症状に陥ってしまうこともありますので、専門家の治療が必要でありますが、新型うつ病は単にやる気がないように思われがちなところもあり、とても厄介でもあります。しかし病気としての傾向がある新型うつ病ですので、ちゃんとした対応を心がけてあげる必要があります。
本書の内容はそれほど深刻なものではありません。まずは簡単なところからうつ病というものを理解してみましょうという内容です。香山リカ氏の他の著書と比較しますと、テレビのコメンテイターで見られるような著者独自の見解はありませんが、それは恐らく著者自身があえてその辺りは薄めて、一般の方がうつ病の方とどう接したらいいかということを、やさしくオーソドックスにまとめようとした意図を感じます。より深刻なうつ病への理解や、具体的な薬の知識などについては本書では足りませんが、うつ病への最初の理解としては、本書はかっこうの入門書となります。