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『戦国武将の養生訓』 山崎光夫 of 新書ブックセンター - 新書専門のレビューサイト -

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著者
山崎光夫
初版発行
2004年12月20日
ISBN
4-10-610098-3 C0221
定価
本体700円


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概要&レビュー

足利義輝、毛利元就、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康と言った錚々たる戦国武将が頼りにした名医、曲直瀬道三(1507-94)。曲直瀬道三は、師匠である田代三喜から医術を受け継ぎ、「日本医学中興の祖」として今でも仰ぎ見られる存在です。曲直瀬道三の医療の原典は東洋医学にあり、時代からして李東垣、朱丹溪という名医の思想を元にした「金元医学」を継承しています。道三亡き後は、「後世方派」として続いていきました。道三が京都に開いた医学学校は「啓迪院(けいてきいん)」といい、『啓迪集』『切紙』『老師雑話』『出証配剤』『薬性能毒』『養生秘旨』『医療衆方規矩』など数多くの本を著して、多くの門人の指導にも力を尽くしました。
上述したように、道三は多くの戦国武将の主治医として活躍しましたが、中でも毛利元就との親交はより深いものがあったようです。元就が陣中への診察を求めるほどに道三へ信頼を寄せていましたが、毛利家繁栄の道しるべの作成を依頼しているほどです。そして道三は元就が亡くなった後に、孫の輝元に健康指南書『養生俳諧』を贈っています。
本『戦国武将の養生訓』では、前半に『養生俳諧』を取り上げ、前文を解説しています。道三がしたためた本文をそのままに記し、「意訳」「解説」を掲げてわかりいやすく解説しています。その内容は現代にも通じるものが数多く、参考になるところが多いです。後半は『黄素妙論』というやはり道三が著した本を解説していますが、こちらは房中術、つまり性の指南書です。性は古来より、男女の精の交合として大切に、そして神秘的に扱われてきたものです。『黄素妙論』は、丹波康頼が著した『医心方』の房中術を参考にした形跡があるようで、資料としても価値が高いということです。
東洋医学を学ぶ人、健康法を知りたい方、戦国武将の健康術を知りたい方に本書はおすすめです。