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『バカの壁』養老孟司 of 新書ブックセンター - 新書専門のレビューサイト -

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著者
養老孟司
初版発行
2003年4月10日
ISBN
4-10-610003-7
定価
本体680円


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概要&レビュー

著者の養老孟司氏は、東京大学医学部の解剖学教室に長年勤務した方。その経験から、「唯脳論」という概念を提唱し、これを軸にしながら社会や文化の様々な側面を切り取りしている方。その切り口が評判を呼び、エッセイや講演、テレビ出演など幅広く活躍している。
2003年に出版された本書は、挑発的なタイトルもあってか、その年のベストセラーにもなり、流行語大賞の受賞や、新書ブームなどを引き起こす。その反響は様々であったが、一部ではその批判が本にもなるほどであった。
私たちは平等に生きていると思っています。しかし実際には様々な差異があります。生物学的な枠で言えば、大きく男女という差があります。人文学的にいえば、文化や宗教と言った内面(養老氏から言えば、内面ではなく脳内面ということになるだろうか)を中心とした差異があります。この差異を理解しないで「話せば分かる」と思っていると、そこに衝突を感じます。衝突が小さいうちは流すこともできますが、しだいに不満が積み重なっていくと大きな流れとなって、喧嘩や暴力、国で言えば戦争にも行き着くことがあります。
本書は、この差異を「バカの壁」と表現しています。様々な事象に存在するこの壁、逆に言えばこの壁があるからこそ生じている「差異」。そういった事象をエッセイ風に語っています。
ともすると人はその差異や壁を無きものとして、人に自分の壁を押し付けたりすることもあります。おせっかいのレベルであれば笑い話でも済みますが、そうもいかなくなるのもまた「バカの壁」の存在ゆえ。まずは「壁」があることを理解し、そこから壁との距離感の保ち方や、壁の乗り越え方などもわかってくる。そうすると、世の中を読み解くヒントになっていく、そんな始点を与えてくれる一冊です。