概要&レビュー
テレビで観る名越康文先生は、とても自信家で理知的な感じがする。どこをとっても隙がないような印象で、名越先生自身は悩むことがあるのだろうか?と思ってしまう。しかしそんな印象とは別に、本書には意外にも毎日瞑想をしたり、心が折れそうになるときもあるという名越先生の一面を見ることができ、同じ人間として、まずほっとするかもしれない。
「はじめに」のところで、「あえてハウツー的なものにこだわってみよう」とあるのだが、具体的な方法論をまとめて述べているところはない。本書は、終始一貫名越先生との対談形式で書かれており、その対談の中から心を軽くするヒントを見つけ出す必要がある。そういう意味では、たいへん不親切な感じがしないでもないし、タイトルだけが先行している感じもする。
本書の利用は、現在の日本が抱えている精神的な闇や、どうもすっきりしない日本の置かれた立場、そしてその中で生きていかなくてはいけない我々の苦悩や苦闘を、心理学者の目を通して理解していき、そしてその対処法を対談の中から汲み取っていくという感じであろうか。タイトルの通り“瞬間”で変わるような本ではないが、じわじわと伝わるもので、ところどころにある生きるヒント、視点を変えるヒントを拾い集めたい一冊である。